アロマテラピー検定・資格の認定、学術調査研究の実施

アロマの研究・調査

アロマテラピー学雑誌 Vol.5 No.1 (2005)

総説

におい受容の生物学的意義 ―ノーベル賞受賞研究から観る―

著者名 大瀧丈二
文献名 アロマテラピー学雑誌5(1)1-8 (2005)

2004年のノーベル生理学・医学賞が二人の嗅覚分子生物学者、リチャード・アクセル教授およびリンダ・バック博士に与えられた。
1991年に彼らによって発表されたにおい受容体遺伝子の発見は、嗅覚生物学の歴史だけでなく、分子生物学の歴史自体も変革するものであった。
彼らの発見に基づいて、この論文では、におい受容の生物学的意義について論じ、また、その基本的メカニズムを解説する。これらの知識はアロマテラピーの働きを理解する一助となるであろう。

キーワード

におい受容、におい受容体、においのコード化、生物学的意義、ノーベル生理学・医学賞

原著論文

精油による在宅介護者の蓄積的疲労に対する効果

著者名 真砂涼子、平淳子、倉石愛子、金さだこ
文献名 アロマテラピー学雑誌5(1)9-15 (2005)

精油の介護疲労に対する効果を評価することを目的として、児の介護を行っている家族介護者(母親)11名(年齢39.2±4.1歳)を対象に、休憩中の室内への精油噴霧を実施し、香りの有無による効果を蓄積的疲労徴候インデックス(Cumlative Fatigue Symptom Index:CSFI)と血圧、脈拍数、睡眠時間により評価した。
その結果、1.精油噴霧の有無にかかわらず、休憩することで「一般的疲労感」「身体不調」以外の6特性で訴え率が低下した。2.香りの有無による比較では、香り条件の方で「不安感」が有意に低下し、「介護意欲の低下」は減少する傾向であった。3.調査開始前のCSFI訴え率を一般女子の基準パターンと比較したところ、「抑うつ感」を除いた7つの特性が高かったが、香りなし、香り条件では、主に精神的側面及び雰囲気・不満を表す項目が低くなっていた。4.血圧、脈拍数、睡眠時間は条件間に有意な差は認められなかった。
以上のことより、休憩中の室内への精油噴霧が介護者の精神的疲労の軽減に効果がある可能性が示された。特に、精油噴霧を行うことで「介護意欲の低下」「不安感」 といった介護現場の雰囲気・不満を表す面で訴え率が低下していることは、介護の継続のためには重要なことであると思われる。

キーワード

芳香浴、蓄積的疲労徴候インデックス(CSFI)、介護疲労、セルフケア

正常な初産後の母親に対するアロマ・マッサージ効果に関する臨床研究―マタニティブルーズ、不安、気分、対児感情、唾液中コルチゾールについて―

著者名 井村真澄、操華子、牛島廣治
文献名 アロマテラピー学雑誌5(1)17-27 (2005)

本研究は、正常な初産後の母親に対するアロマ・マッサージ(芳香浴下全身マッサージ)効果を検証するために実施された準実験的比較臨床試験である。2003年9月から2004年6月に都内一般病院産科病棟入院中の産後の母親(平均年齢32.0歳SD3.8年齢範囲24~39歳)40名を対象とした。アロマ・マッサージ群(以下AM群)20名、対照群(以下C群)20名を設定し、AM群の母親は、産後2日目午前中に30分セッションのアロマ・マッサージを受け、セッション前後に自記式心理質問紙への記入と唾液採取を行った。C群の母親は、通常の入院生活をしながらAM群と同時刻に同様の質問紙への記入と唾液採取を行った。
その結果、AM群はC群に比べて、マタニティーブルーズスコア(p= .006)STAI状態不安(p=.000)、POMS緊張ー不安(p=.000)・抑うつ(p=.022)・怒りー敵意(p=.001)・疲労( p=.000)混乱(p=.003)が有意に低下し、活気(p=.006)が有意に上昇した。児への接近感情スコアは、AM群がC群に比べてわずかに増加傾向を示したが統計学的有意差はなかった(p=.123)。回避感情(p=.742)および児への相反する感情の強さを示す対児感情拮抗指数(p=.317)は両群とも減少し有意差はなかった。
唾液中コルチゾール値のセッション前後差は、AM群においてわずかに大きいが、有意差は認められなかった(p=.126)。アロマ・マッサージは、産後の母親の心身の回復と、子どもへの肯定的な感情を促進する可能性が示唆された。

キーワード

産後の母親、アロマテラピー、マッサージ、不安、唾液コルチゾール

研究ノート

妊婦におけるアロマテラピーとハーバルケアに対する意識調査

著者名 酒井めぐみ、代田琢彦
文献名 アロマテラピー学雑誌5(1)29-34 (2005)

近年、妊娠を期にアロマテラピーやハーブに興味を持ち、それを妊娠中に使用したいと考える妊婦が徐々にではあるが増えていると言われる。しかし、妊婦におけるアロマテラピーやハーブに対する認識に関する報告は少ない。今回我々は産科受診中の妊婦、ハーバルケア・アロマテラピー講習会受講者、一般社会人女性を対象として、アロマテラピーやハーブに関する意識調査を行った。妊婦のアロマテラピーに対する認知度は63%、実践度は32%で、知っているが実践したことはないとの回答を得た。ハーブは認知度が19%、実践度が20%と、広く認識されているとは言い難い。
それぞれの結果は同年代の一般社会人女性とほぼ同様であったが、妊婦群は講習受講後には80%以上がもっと知りたいと回答した。また、1ヶ月あたり投資できるとした金額は、三群とも大半が3000円以内であった。以上より、アロマテラピーやハーブに関する情報の入手方法や実際の活用方法、コストに関して、提供側がよりいっそう工夫することが重要であることが示唆された。

キーワード

アロマテラピー、ハーバルケア、妊婦、意識調査

アロマテラピーを起点とした環境教育の可能性 ―東邦大学薬学部付属薬用植物園メディシナルハーブガーデンでの試み―

著者名 飯田みゆき、村上志緒、林真一郎、小池一男、二階堂保
文献名 アロマテラピー学雑誌5(1)35-48 (2005)

環境教育の目的は「環境問題に対して行動できることを育てること」であり、その目的を達成するために「関心」「理解」「行動」という3段階の目標が使われている。
本研究では、アロマテラピーを起点とした環境教育プログラムの可能性を検討するとともに、東邦大学のハーブガーデンにおいて、グリーンフラスコ研究所と東邦大学薬学部付属薬用植物園の共催で、社会人を対象とした環境教育セミナーを実施し、その教育効果を検討した。
その結果、セミナー参加者の「行動」の目標に対しては大きな変化を得られなかったが、「関心」「理解」の目標に対して顕著に前進したことを確認し、また、参加者の自然に対する視点に変化があり、教育効果が認められた。今回のセミナープログラムでは生活廃水や大気汚染などの具体的な環境問題についてはほとんど触れなかったが、今後、参加者の行動に変化を期待するためには、環境問題にも踏み込んだプログラムの開発が必要であると考えられた。

キーワード

環境教育、アロマテラピー、ハーブガーデン、メディカルハーブ