アロマテラピー検定・資格の認定、学術調査研究の実施

アロマの研究・調査

アロマテラピー学雑誌 Vol.10 No.1 (2010)

原著論文

アロマテラピーが自然に対するイメージ・感謝感情,環境意識に及ぼす影響

著者名 福島明子 内藤俊史
文献名 アロマテラピー学雑誌10(1)1-16 (2010)

 本研究では,アロマテラピーの演習を4カ月間履修した大学生(アロマ群,N=30),アロマテラピー以外の演習を履修した大学生(統制群,N=20)を対象に質問紙調査を行い,アロマテラピーが自然に対するイメージや感謝感情,環境意識に与える影響について検討を行った。アロマ群は,統制群よりも森林に対する癒しのイメージや雄大なイメージが強く,演習後に自然全般,森林,海,川に対するありがたさ感情が有意に強まるなどの変化がみとめられた。アロマ群は統制群よりも日常的な資源配慮行動を有意に実践しており,環境保護に対する経済重視の意識が有意に低かった。また,自然に対して癒しやありがたさを強く感じている人ほど環境保全意識が有意に高く,自然に対して雄大なイメージを抱いている人ほど身近な資源配慮行動を有意に実践し,自然に対して恐れ,癒し,すまなさを感じている人ほど経済重視の環境保護意識が有意に強いといった結果が得られた。以上のようにアロマテラピーを学ぶことにより,自然に対するイメージやありがたさ感情が変化し,また自然に対するイメージと自然に対する感謝感情,環境意識との関連がみとめられた。本研究の結果は,アロマテラピーに親しむことが環境意識を高めたり実際的な資源配慮行動を促進することにつながることを示すものであり,環境教育におけるアロマテラピーや香育の可能性を示唆するものといえよう。

キーワード

アロマテラピー,自然,イメージ,感謝,環境教育

パルマローザ精油と塩酸テルビナフィンを用いた足浴による足白癬治療の試み

著者名 服部尚子 井上重治 高橋美貴 内田勝久 川口健夫 安部茂
文献名 アロマテラピー学雑誌10(1)17-24 (2010)

 0.8%パルマローザ単独 A または0.04%テルビナフィンとの併用 B か0.l%ヒノキチオールとの併用 D および0.04%テルビナフィン単独 C の足浴で,東芝病院を訪れた患者26名の足白癬を治療した。薬剤は患者と医師の二重盲検で割り付けした。足浴は1日1回,42℃で25分間を足白癬には4日間,爪白癬併発の足白癬には5日間連続して実施した。2週間後にKOH-検鏡で菌陰性化率,症状改善度およびフットプレス陰性度を調べた。第1クールでは,薬剤 B が最高の除菌率(57%)を示し,ついで A と D が53%, 50%, C が最低の33%であった。第1クールで無効ないし再発した患者の一部について第2クールを実施したが, A , B , C および D すべてで完全に除菌された。臨床症状のうち,趾間型,水疱型よりも角化型の除菌率が高かった。患部からの皮膚糸状菌の排出散布は1回の足浴でほぼ止まり,足浴を止めた2週間後も持続した。足浴には重篤な副作用は認められなかった。結論的に足白癬は短期間の精油を用いた足浴によく反応して改善された。

キーワード

足浴,パルマローザ,テルビナフィン,足白癬

艾葉香気成分のアトピー性皮膚炎に対する効果の検討―4種の生薬を含む軟膏の調製―

著者名 日置智津子 荒井勝彦 新井信
文献名 アロマテラピー学雑誌10(1)25-32 (2010)

 アトピー性皮膚炎に悩む患児や成人が多く,ステロイドではない治療薬が希求され,漢方生薬を用いた外用剤の実用化にむけて研究を展開した。本研究では,4種の生薬香気成分を含む生薬軟膏(この論文では黄膏とする)が調製された。これには3月から8月まで,手積みで採取された艾葉の抽出エキスが使用されており,アトピー性皮膚炎患者が1年6カ使用した結果,皮膚症状の改善が認められ,同時に社会参加に対する積極性が現れて,生活の質の向上が見られた。患者は使用前に軟膏の匂いや色で,効果に対する期待値を示して軟膏の効果を評価しており,特に8月採取の艾葉抽出エキス含有軟膏の効果は,皮膚症状の回復が他の時期よりも速く,この時期の艾葉を用いた黄膏を高く評価した。皮膚健常者58名を対象として,同軟膏と基剤が感覚器に与える刺激について調べた結果,患者でなくても嗅覚と触覚を介した刺激が,効果に対する印象を決めており,黄膏は塗り心地と艾葉の匂いが特長的で好ましく,一見して基剤より好まれた。複数の生薬を含む黄膏であるが,艾葉の香気成分は治療に対する意欲を促すなど,心身両面においてアトピー性皮膚炎の治療に効果が期待できると推察された。

キーワード

アトピー性皮膚炎,香気成分,艾葉,感覚器官

5種類の精油による芳香浴がコンピュータ作業に及ぼす効果

著者名 渡邉映理 木村真理 今西二郎
文献名 アロマテラピー学雑誌10(1)33-45 (2010)

 5種類の精油によるコンピュータの作業効率改善と生理心理学的効果を検討した。健康な20~25歳の男子81名が試験に参加した。うち30名には心拍変動測定・唾液採集が行われた。30分の芳香浴のうち12分間3桁の足し算の計算作業をコンピュータで実施し,正答数を作業効率として算出した。試験は5種類の精油,ゼラニウム(GE), グレープフルーツ(GR), パルマローザ(PA), ペパーミント(PE), ラベンダー(LA)と香りなし条件(N)の合計6条件とし,順番を対象者によりランダムに決定し,81名全員が6条件の試験に連続して参加するクロスオーバーデザインで行われた。作業効率得点はN条件と比較して,GE*, GR+, LA*+条件で得点が上昇し,唾液中コルチゾール値が低下した(作業効率得点:p<0.05*, コルチゾール:p<0.05+)。香りによって作業中のLF/HF, つまり交感神経系の指標が低下した者は,コルチゾール,α-アミラーゼも低下し,疲労度も低下する傾向が見られ,本研究により,芳香浴をパソコン作業の多い職場環境に取り入れることにより,作業により生じた心身の不快感を取り除き,作業効率を改善させる可能性が示された。

キーワード

作業効率,精油,心拍変動,唾液中コルチゾール,α-アミラーゼ

育児ストレス軽減に対するアロマテラピーの効果

著者名 山本佳代子 山崎あかね
文献名 アロマテラピー学雑誌10(1)46-52 (2010)

 子育てにおけるアロマテラピーの有効性を検討するため,3歳までの子どもを育児中の母親を対象に足浴を実施し,ストレスレベルの変化を測定した。実験は5日間連続した足浴を1カ月の期間をおいて2回実施し,2回目の実験ではネロリ精油を足浴器に混入した。実験初日と最終日にはそれぞれ足浴前後,および1時間経過後に唾液を採取し,コルチゾール濃度の変化を測定した。あわせて自計式質問紙を用いた育児ストレス度の測定を行った。その結果,両者において足浴後,足浴終了1時間後では足浴前に比べ,唾液中コルチゾールは低下する傾向を認めた。また,質問紙によるストレス度を示すスコアもおおむね低下し,いくつかの項目で有意差が認められた。よって,本研究では,足浴に伴いストレスホルモンであるコルチゾールの濃度が低下し,アロマテラピーによる一定のリラックス効果が期待できることが示唆された。しかし,2回の実験による統計的な有意差は認められず,精油の効果についてはさらなる検討が必要とされた。

キーワード

アロマテラピー,子育て,ストレス,足浴,唾液中コルチゾール

精油とリラクセーション技法がストレス反応に与える心理生理的効果の検討

著者名 山田裕美 植田健太 中川晶
文献名 アロマテラピー学雑誌10(1)53-63 (2010)

 本研究ではアロマテラピー芳香浴とリラクセーション技法がストレス反応に及ぼす生理的・心理的影響を近赤外線スペクトロスコピーNIRSとSTRESS RESPONSE SCALE-18を使用し測定した。具体的には,被験者(13名)にストループ課題によりストレス負荷を与え,ストレス負荷時のNIRS値とストレス負荷後の各実験条件(コントロール条件・ベルガモット吸入条件・カモミール吸入条件・リラクセーション技法条件)におけるNIRS値の変化量を被験者ごとに測定した。また,実験前,および各条件終了後にSRS-18への記入を求めた。各条件後のSRS-18の数値を比較した結果,リラクセーション技法条件後では心理的ストレス反応である「無気力」が軽減される傾向が示唆された。また,NIRS値の結果からは,カモミールの吸入が,抑うつ感や不安感の増大に関連すると考えられる前頭葉oxy-Hbの濃度を減衰させることが示唆された。さらに,ストレス負荷時と各条件時のoxy-Hbとdeoxy-Hbを比較した結果,コントロール条件・カモミール条件では,右前頭葉oxy-Hbが有意に低下し,ストレス負荷による右前頭葉神経活動が鎮静することが,カモミール条件・ベルガモット条件・リラクセーション条件では,左前頭葉oxy-Hbは有意に低下し,ストレス負荷による左前頭葉神経活動が鎮静することが認められた。deoxy-Hbの有意な差は認められなかった。

キーワード

アロマテラピー,リラクセーション技法,近赤外線スペクトロスコピー

里山の植物を用いた嗅覚刺激による生理的・心理的効果

著者名 恒次祐子 綛谷珠美 朴範鎭 香川隆英 宮崎良文
文献名 アロマテラピー学雑誌10(1)64-72 (2010)

 本研究の目的は,身近な自然である里山の植物のにおいによる生理的・心理的効果を明らかにすることである。里山の代表的な植物であるヤマザクラおよびマダケのにおいに暴露された際の前頭前野血液動態,収縮期血圧,拡張期血圧,脈拍数,唾液アミラーゼ活性,ならびに主観評価,気分評価を検討した。被験者は男性20名(24.2±2.5歳)とした。結果として,1)ヤマザクラとマダケの双方で脳活動が鎮静化すること,2)ヤマザクラでは唾液アミラーゼ活性が有意に低下すること,3)マダケでは収縮期血圧および脈拍数の有意な増加が認められることが明らかになった。すなわち両者とも脳活動を鎮静化させる一方,マダケでは交感神経活動優位な状態がもたらされ,ヤマザクラでは交感神経活動の抑制が認められた。ヤマザクラとマダケにおいて主観評価および気分状態に有意な差が認められなかったことから,生理測定により言葉を用いた主観的な検査では検出されないにおいに対する生体の反応を明らかにすることができたと考えられる。

キーワード

里山,嗅覚刺激,前頭前野活動,自律神経系活動,主観評価