府中市立図書館は、市民交流の場
「アロマを楽しみながら読書ができる図書館があるらしい」
と聞いて、広島県府中市にやってきました。
山陽新幹線福山駅からローカル電車の福塩線にのんびりゆられて約40分。
府中市は人口約4万2千人、古くから家具産業が栄え、高級家具『府中家具』の産地として知られています。『府中市立図書館』は駅からほど近い場所にあり、2Fの“ふれあいホール”ではさまざまな文化イベントを開催、市民交流の拠点にもなっているそうです。
瓦屋根と黒漆喰風の外観が和風の趣を漂わせる、素敵な建物でした。
投書箱の意見をきっかけに、
アロマを導入
「図書館のにおいは、本屋さんのような新しい本のにおいではなくて、ちょっと複雑な、独特なにおいがあるんですよね」
今回お話をうかがったのは、府中市立図書館の館長、佐竹達司さん。
昨年4月の館長就任以来、よりよい図書館への改革を進めてきました。
梅雨どきなど湿気がこもる時季は蔵書のにおいが気になると佐竹さん自身も感じていたところ、1Fに設置してある利用者からの投書箱に「図書館がにおう」という意見をみつけました。「ああ、やっぱり。図書館のにおいを“嫌なにおい”と感じる人がいるんだな」と思い、なんとかしなければと心に留めていました。
通り過ぎるときに、フワッと香って
「ニコッ」と笑顔になる
昨年の秋、広島市内でブックフェアが開催されたときのこと。
佐竹さんが会場を訪れると、どこからか“いい香り”が。
香りのもとをたどると、ジェラルミンケースのような形をした装置に行き当たりました。会場全体という訳ではなく、その装置の周辺にふわりと漂う柑橘系の香り。
佐竹さんは「これだ」と思いました。
早速その装置について調べ、円筒形のおしゃれなデザインのアロマディフューザーを購入、たくさんのサンプルから、スタッフと相談して香りを選びました。
「館内中を香りで満たしてしまうと、香りを嫌がる人もいるかもしれない。だから、そこを通ったときにフワッと香るくらいがちょうどいい」。
さまざまな人が利用する図書館ですら、こうした配慮も必要なんですね。
市民の声を取り入れて、
もっと“開かれた図書館”へ
佐竹さんが館長になって気になったのは、「図書館は敷居が高い」という市民からの声。
府中市に住んでいても、一度も利用したことがないという人が少ないそうです。
もともと市役所の職員だった佐竹さんは、市民の声を行政の運営に活かすことを得意としてきました。図書館へのアロマの導入も、「どうしたら図書館を快適に利用してもらえるか」という声があり、今後も積極的に香りを取り入れる決断をしました。「本は借りなくても、香りを楽しみに来る人という人もいます。図書館をもっと身近な存在に感じてもらえるように、アロマを使ったイベントなども企画してみたい」と語る佐竹さん。
本だけでなく、“いい香り”に出会える府中市立図書館。こんな図書館が、日本全国に増えるといいですね。